欲に追い回されて全てを失ってしまった人生
よく、「生活が苦しくて食費を削った」という話を聞きます。
勿論、その人たちも生活は苦しかったのでしょう。
ですが、それは最低限の収入があるから言える事だと思います。
私が1番追い込まれた時期は、本当に「地獄」だったと思います。
俳優の卵だった僕
私は、高校を卒業してから10年以上俳優を目指して養成所に通っていました。
毎月レッスン費を支払い、舞台のチケットを自費で購入し、と生活は困窮していました。
「仕事を増やせば良い」とよく言われますが、舞台の稽古が遅くまであるので出来るとしたら夜勤になります。
ですが、夜勤をすると肌が荒れてしまい数少ないテレビや舞台の仕事にも影響が出てしまいます。
なので、稽古の合間を縫ってコールセンターで働いていましたが、収入は月に10万程。
それも家賃と上記の支払いを済ませると、毎月手元に残るのは15000円程。
携帯代と光熱費を支払うと毎月食費は3000円程でした。
ある時手を出したのが
あまりにも収入が無かった僕に、友人が副業を紹介してくれました。
それは、「女性向け出張マッサージ」でした。
表向きは自宅やホテルに呼ばれて、マッサージを行うという物でした。
ですが、中身はいわゆる「性的なマッサージ」でした。
本番行為は無いものの、着衣を身にまとっていない女性の全身をマッサージして、1時間で1万円程の現金を貰っていました。
食事なども提供してくれたので、当時の私は非常に助かりました。
年齢の割に若く見られていたので、それなりにお客さんもついて収入は一気に潤いました。
転落人生の始まり
それまで10年以上「ゆとりのある生活」を送った事が無かった私が少し現金にゆとりがあると何が起こるか。
簡単な話です。「無駄遣い」が始まりました。
家電製品の買い直しに始まり、衣服、車と持ち物が段々豪華になっていきます。
それにつれて、レッスンや舞台稽古に通う頻度が低くなりスタイルも崩れていきます。
徐々にマッサージの指名も減っていたのですが、それに気が付かないほど有頂天になっていました。
ある時、家賃の引き落とし日に現金が足りなかった時がありました。
「口座にお金を入れ忘れたかな?」と思い現金を確認して初めて現状に気づきました。
ピーク時は3桁を越えていたお金が、3万円しか入っていませんでした。
現金が無くなってまず考えたこと
普通の神経の人ならば、ここで車や家電製品を売ってお金を作るか、急いで日雇いの仕事をするのだと思います。
ですが、その当時の私は生活水準を落とす事に恐怖を感じており、消費者金融から借入を行いました。
この消費者金融を利用した事が転落スピードを加速させます。
それは「借金」なのに、「貯金」だと勘違いしてATMで引き落として使う毎日。
気が付けば消費者金融も満額借入になっていました。
次に利用したのは、クレジット現金化でした。
しかし、この現金化は2か月で引き落としが出来ずに利用できなくなりました。
郵便ポストから溢れる大量の督促状
家に届く大量の督促状を見て、初めて自分が置かれている現状に気が付きました。
「今が元の生活に戻る最後のチャンスかもしれない」と思い、家電製品や車を売り払い、家を解約して安いアパートに引っ越しました。
「また俳優の仕事に戻ろう」と思って鏡を見たときに絶望しました。
そこにあったのは、たるんだお腹/がさがさの肌の実年齢より老けて見える自分でした。
なんとかしなければと思い、ネットで検索していると見つけたのが肌を引き締める薬でした。
「1月で肌が若返る」そんなフレーズでした。
1月分で50万円。普通に考えれば買わないのですが、「これだけ高価ということは効能も凄いだろう」と思い、すぐに購入しました。
手元にお金は無くなりましたが、これで俳優業に戻れる、と期待していました。
突きつけられた厳しい現実
10日もすると変化が現れました。
それは、激しい肌荒れでした。
おかしいと思い、購入した会社に電話したところ電話が繋がらず。
そこで初めて騙された事に気が付きました。
仕事をしようにも、顔は真っ赤に腫れていて人前に出られる状況ではありません。
面接に申し込むも受け入れてくれる仕事は見つからず。
現金も無く、住むところもなくなりホームレスになるのはあっという間でした。
食いつなぐために
ホームレスといっても、日常生活を送るためにはお金が必要です。
そこで選んだ仕事は、男女問わずホームレスの人たちへの性的奉仕です。
一人を相手にして500円。ですが、一人相手にしたら1日の食費にはなります。
「何故ここまで落ちぶれてしまったのか」と考えたこともありますが、全ては自制心を持てなかった自分のせいだと理解していました。
しかし、「こんな自分でも必要としてくれる」と謎の満足感を持つ事もありました。
そして現在
他のホームレスの方にも多かったですが、コロナ関連の給付金で何とか生活を立て直しています。
立て直すといっても宿がある、というだけなのですが雨風の心配がなく眠れる事がこれほど幸せだとは思いませんでした。